日記・コラム・つぶやき

2016年12月 6日 (火)

歌田先生が平成28年度文化庁長官表彰被表彰者に決定

文化庁長官表彰は「文化活動に優れた成果を示し,我が国の文化の振興に貢献された方々、又は、日本文化の海外発信,国際文化交流に貢献された方々に対し、その功績をたたえ文化庁長官が表彰する。」とある。歌田眞介先生が表彰されることになった。受賞者のリストはこちらを参照。「2016120202_besshi01.pdf」をダウンロード

歌田先生は保存修復の分野で油彩画の技法材料、修復技術について研究と実践を続けてこられた方だ。創形美術学校修復研究所の所長として、民間の研究者の立場で長く活動されてきた。

国がやらないことを、弱小な一民間機関が徹底してやり続ける。油彩画の修復は、修理前、途中、修理後と、あらゆる段階でカルテや記録写真を作成し、整理して恒久的に保管する必要がある。40年以上も前にそのことを説き、実際に修復研究所で始めたヒトである。

多くの人たちがその影響を受けた。私もその一人と任じている。東京国立博物館の保存修復カルテ作りは始まってまだ20年にも満たない。歌田先生の強い思いを引き継いだつもりだ。

国がやらないことを民間が始める。すると国は丁度いい出来合いの頃を見計らうように国の機関に招き入れる。こうしたやり方が幾度も繰り返され、今日に至っている。これが日本流とするならば、民間がしっかりしなければ国の将来はないことになる。

歌田先生、おめでとうございます。

ウーバー Uber に乗りました

10月下旬、まさに米大統領選挙最終盤のワシントンに、講演のため出かけてました。雨に降られることなく快適な1週間の滞在でした。そして何よりも美しい晩秋の景色は、それまで数か月の間、準備に追われてへとへとの状態の自分を癒してくれるのに十分でした。

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ヒラリー・クリントンさんとドナルド・トランプさんがデッドヒートの選挙戦を演じている割には、首都ワシントンは静かなもので、全くそうした気配は感じることがありません。

ワシントン滞在最後の夜、夕食に招かれてワシントン郊外にある友人宅に出かけました。近所には、中心部から続く長い森の公園や、たくさんの大使館関係の建物がある落ち着いた地域です。友人の裏庭には奥さん用のアトリエ建設が始まったばかりで、彼の自慢の庭は現在はちょっと荒れていました。アトリエが完成したら今度は庭造りだと言っていました。

さて、夕食をいただき、ひとしきり思い出話や世間話に花が咲き、時間は10時を少し回った頃でした。そろそろいとまをということで、タクシーを呼んでもらえるよう尋ねると、ウーバーをすでに手配してあるとのこと。『ウーバー』なんて聞いたこともなし。なんのことだか全くわからず、聞いてみた。日本で言えば『白タク』に当たるのだろうか。

ウーバーを運営する会社に、自家用車を所有している個人が登録すると、タクシーのように人の送迎ができるシステムで、ちょっとした小遣い稼ぎになるようです。『白タク』というと、なんだか怖そうですが、さにあらず。本物のタクシーに乗っても、ぼられるとかの危険はしょっちゅう聞きます。でもウーバーはネットにつながっているため、履歴が完全に残ることから犯罪の抑止効果があり、万が一問題が発生すると、利用者の通報により、瞬く間にネット上で全体に広がり、その結果問題を起こしたドライバーはその後一切の仕事が来なくなるという。ネット社会を上手く使った監視システムでしょうか。限られた資源を有効に使うシェアリングという考えに即した車の利用の仕方とも言われています。

今回迎えに来てくれたウーバーは、友人がよく利用する近所の黒人女性で、ほとんど新車のRV車で、道案内はスマホでした。娘の結婚式費用を少しでもねん出するためにウーバーを始めたそうです。丁度、収穫感謝祭前のワシントンの夜道でした。


New島根県人会発足

番組制作会社の中島さん、アナウンサーの山本さんと久しぶりに呑み会を開きました。(山本ミシェールさんのfacebookをご覧ください。)


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海外向け放送NHKワールドTVで、今年上半期に文化財の保存について取り上げていただいた番組でお世話になった方々です。

話が盛り上がっていくと、三人とも両親が島根県出身であることが分かったのです。そんなこと全く考えたこともなく、集まった三人なのですが。丸もちと生海苔のお雑煮、笹ガレイの一夜干し、のやき(かまぼこ)など、文化圏が同じであることが何とも不思議な癒しの気分になりました。

そこで急遽、県人会を結成する次第となり、年明け早々には新年会を計画しておるところです。だんだん。

2016年7月 4日 (月)

和紙の里 五箇山

白川郷から車で富山県の南西の端にある五箇山に向かった。五箇山も白川郷とともにユネスコ世界遺産に登録された合掌造りの集落がある。

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白川郷は大型バスを連ねて外国人観光客がやってくる観光地であるが、ここ五箇山はそれに比べるとひっそりとして静かなものである。

五箇山には原料の楮が豊富で、豊かな水があるため古くから和紙作りの盛んな里であった。

この地域の紙すき歌に

       雪にうもれて紙すく村は、

       野積四谷にオワラ五箇五谷

       五箇の五谷に野積の四谷

       一日紙すきゃオワラ千になる

野積谷と五箇山の地域のあちこちで紙が漉かれていた様子がわかる。「千になる」とは千両になるということらしい。

五箇山和紙の里では紙漉き体験ができるほか、漉いたばかりのいろんな種類の和紙、和紙を使った工芸品が販売されている。

この地域での和紙作りを束ねるのが五箇紙協同組合で、輸入の楮に頼ることなく、1町歩弱の桑畑を楮畑に変えて、今でも自前の楮を栽培し、和紙の原料としている。

そこで働く和田さんにいろいろと教えていただいた。

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2016年6月25日 (土)

白川郷

長年の夢。白川郷に出かけた。

高山から車で難所の天生峠(あもうとうげ)を越えた。下り終わると、小さな集落にひっそりたたずむ合掌造りがお出迎え。

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そこから、いわゆる白川郷に到着すると、さすがにユネスコ世界遺産だけあって、ものすごい観光客が訪れている。

大きな駐車場に車を止め、外国人観光客に交じって見晴らし台に登ると眼下に郷が広がっている。雨上がりで空気が澄んでいるためか、遠くまでよく見えた。

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ざっと見て30棟くらいの茅葺合掌造りの建物がのこっている。圧巻だ。

内部を公開している重要文化財の民家。

民宿を経営している民家。

日本ナショナルトラストが買い取って保存を進めている民家。

そういったこととは関係なしに、生活を続ける一般の民家。

茅葺をトタン葺きに変えた民家。

いろいろなスタイルがある。

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2016年6月15日 (水)

みんなの森 ぎふメディアコスモス

伊東豊雄さんが設計した「みんなの森ぎふメディアコスモス」を見に出かけた。

2015年7月に岐阜市内に新しくオープンした図書館である。

住所: 〒500-8076 岐阜県岐阜市 司町40番地5

電話: 058-265-4101

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建物の外観は曲線が多く使用され、正面左側には仮設テントでよく見られる花を逆さにしたような屋根をもつコンサバトリーに Starbucksが出店している。

面白い空間であると噂で聞いていたので、中に入る前から楽しみ、ドキドキ。日曜日ということもあって沢山の市民が来館していた。お陰で駐車場は超満車状態で、長蛇の列。

中に入ると蜂の巣の中にいる様な空間が広がっている。天井は木材板が幾重にも交差しながら、何層構造に重ねてあり、カッパドキアの洞穴を連想させるようにうねっている。

その天井からクラゲのような大きな傘が下がり、その傘の下に図書館のいろいろなコーナー設置されている。クラゲの傘は直径が10メートル以上、メッシュ状の生地に模様が織り込んである。

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傘の下には貸出や図書検索のコーナーがあったりする。図書は傘から外れた空間に、高さ150センチほどの低い本棚に配架されていて、フロア全体が見渡せる。

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読書コーナーも大きな傘の下にあり、ゆっくりと蚊帳に包まれるような感じで、集中できる。

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エネルギー問題に正面から向き合った建築設計だと聞いているが、詳しいことは自分自身よく分かっていない。これから勉強してみようと思う。

2016年6月 1日 (水)

講演録 福島から語る

G7主要国首脳会議が終わった。洞爺湖サミットからの8年間に東日本大震災という、国を揺るがす大災害が発生し、その影響は今も深く社会の隅々に及んでいる。

TVニュースや新聞で知る限り、我国の首相の口から東日本大震災をどう乗り越えようとしているのか、それに言及する場面はなかった。リーマンショック、リーマンショックと繰り返す首相は、経済最優先を一層強く印象付けた。

リーマンショックもさることながら、国民的には東日本大震災の方が大きなリスクであったと思いたい。今もそのリスクは継続している。常磐自動車道を広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、南相馬市と通過してみて欲しい。富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、そこには人気のない人家、荒れた田畑、除染の残土の集積場が延々と続く。大切な故郷を追われた人の苦しみを思うと、涙が止まらない。

避難民として故郷を離れた人々はどこに行ったのか。避難民という語感は、「遠くない将来に、慣れ親しんだ故郷の自宅に確実に帰ることができる」というものだが、帰還困難地域には近い将来には戻ることは不可能だ。

国を捨てて、他国に生命の安全を求めるのが難民。戦争や紛争、政治的暴力など、生命が国家によって保証されないときには、やむなく国を捨てる。放射能という目に見えない独裁者が、人間だけではなく、すべての生き物を脅かしている。魔の手から逃れるために故郷を離れざるを得ない。正に難民である。

2011年3月12日に始まった独裁者の過酷な仕打ちによって、人々は行く先も分からず、取るものも取りあえず、故郷を後にした。到着した先は落ち着けるような場所ではなく、寒さやのどの渇き、空腹に苦しみ、寝る場所もないほど避難民であふれている。

自治体が用意したバスにはペットは乗せられない、親は病気だ。かといって自家用車にはガソリンが乏しく、どこまで辿りつけるかわからない。今すぐ判断しなければならない。病気の親と連れだって、どこに逃げればいいのか。やっと得ることのできたしばしの安住の地で、地域から孤立、家族は離散。

想像を絶する苦労を味わい、乗り越え、今も多くの方々が故郷を遠く離れて暮らしている。

CTVC講演録『福島から語る 3.11以降を生きる人びとの声』を読んでほしい。

名前(ふりがな)、住所、電話番号、メールアドレス、必用部数、申込日を明記して、カトリック東京ボランティアセンター(CTVC)にファックスで連絡すると、送料分だけ負担する形で、着払いで到着する。本体は無料。

ファックス番号は03-6721-1422

カトリック東京ボランティアセンター

〒106-0032東京都港区六本木4-2-39

2016年5月22日 (日)

豊かな山からの恵み

鵜養地区は山から流れ出る豊かな水を「堰」と呼ばれる用水路で集落に導き、田んぼや生活用水に使用している。

今は、ほとんどの田んぼで丁度田植えが終わるころで、こちらも何となく一段落という気分に襲われる。

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鵜養地区から山の方に向かうと、直ぐに大量の水が流れる渓流があって、そこから取水している。

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手を伸ばして水に触れると、冷たくて、しばらく入れていると痺れるほどだ。渓流には淵があったり、浅瀬があったりして、それに沿って歩くと変化にとんだ景色を見ることができる。

丁度居合わせた地元の方から、大声を出して歩きなさいと忠告を受けた。熊と出くわすことがあるからね。

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時折訪れる者にとっては、この景色は豊かな里山の暮らしと映る。しかし、年々茅葺の民家は減る一方で、いつまで見ることができるか、保証の限りではない。なんとか残せないものだろうか。何としても残さなければならない景色だと思う。

秋田鵜養地区は田植えのシーズン

5月21日(土)、秋田県公立美術大学の集中講義に出かけたついでに、鵜養地区を再度訪ねてみた。

今まさに田植えのシーズンで、僅かの田んぼを残して、ほぼ終わりそうな感じでした。

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集落の田舎を流れる「堰」と呼ばれる用水路には、山から流れる水が導かれ、大量の水が勢いよく流れている。この水で泥の付いた農機具を洗ったり、野菜の泥を落としたり、生活にはなくてはならないものだ。

田植えが終わった田んぼに茅葺の民家が映っている。こんな景色をもっと見たいと思う。

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鵜養地区にはまだ数棟の茅葺民家が残っていて、今でも心安らぐ景色を見ることができる。田植えを終えると、一息ですね。

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2016年5月16日 (月)

今も続く津波被災資料の処理

陸前高田市立博物館では、あの巨大な津波から5年が経つ今も、大量の被災資料に対する保存処理が継続しています。

津波によって汚れた資料は、まず必要最小限の処置として除菌、脱泥、脱塩が行われます。こうしておけば、資料の急激な劣化をひとまず止めることができます。この処置を安定化処理と言います。

安定化処理を終えた資料にのみ、破損部や欠失部の処理としての本格修理が施されます。安定化処理を終えた資料はまだ十数万点。残りは三十万点もあります。

旧生出小学校は現在は陸前高田市立博物館として使用されています。展示室こそないものの、小学校を利用した市立博物館の中では、資料収集、整理、調査などの通常業務とともに、被災資料の安定化処理がコツコツと続けられています。

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                      臨時職員の方々紙資料の洗浄作業

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                 臨時職員の方々による金属製品の洗浄作業   

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     元漁師さんの村上覚見さんの指導を受けながら漁労用具の調査

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    教室の黒板には作業の順序が記されているが、訪れる度に内容が新しくなっている

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気になる1冊

  • ★井川 聡: 『超高層から茅葺へ』
    海鳥社 2012 日本設計の池田武邦さんがハウステンボスの設計にかけた情熱とその源泉について、ドキュメンタリー的に記されている。茅葺に興味があったので手に取ってみたが、ハウステンボスの設計思想とその実態について初めて知ることが多く、ぜひ一度行ってみたくなった。
  • ★ヨースタイン・ゴルデル著 猪苗代永徳訳: 『オレンジガール』
    命のバトンタッチの意味。
  • ★籔内佐斗司: 『壊れた仏像の声を聴く 文化財の保存と修復』
    一緒に仕事をする機会には恵まれませんが、いつも気になっている方が仏像と修理について書き下ろした本です。
  • ★バージニア・リー・バートン 著 まなべ まこと 監修 いしいももこ訳: 『せいめいのれきし』 改訂版
    恐竜研究の第一人者・真鍋真氏が監修した絵本。絵本と言ってもかなり高度な内容です。生命のバトンタッチを分かりやすく描いたもの。
  • ★日本博物館協会 (編集): 『博物館資料取扱いガイドブック-文化財、美術品等梱包・輸送の手引き-』
    美術品梱包輸送技能取得士認定試験の制度が始まって4年が経ちます。認定試験を受ける人のための教科書であるとともに、美術品の展示、輸送に携わる人々にもとても役立つ本です。
  • ★ケヴィン・ヘンクス著 多賀京子訳: 『マリーを守りながら』
    自分にも娘がいるが、少女のころの彼女の気持ちを理解、解りあえることは難しかった。父親と幼い娘の間の気持ちの揺らぎを描いた作品。
  • ★藤沢修平: 『三屋清左衛門残日記』
    60歳で定年後、特任研究員として再雇用された時、これから先の時間を如何に過ごすか想像できなかったとき、ご隠居という言葉を理解しようと思って読んだ本。
  • ★ローズマリ・サトクリフ著 灰島かり訳: 『ケルトの白馬』
    イギリスの山肌に描かれた巨大な白馬の絵。その起源を求めて太古の物語にヒントを得て描かれた本。敵に滅ぼされた部族に生き残ったわずかな人々が新天地に旅立っても、彼らの先祖が馬乗りの名手であったことを地上に永遠に刻み込むために、敵方のために描いた白馬。
  • ★K.M.ベイトン著 山内智恵子訳: 『駆けぬけて、テッサ』
    血統には恵まれてはいるが、視力に問題を抱えたサラブレッド・ピエロとともに、自分の道を懸命に探し続ける少女テッサが苦難を後超えて、グランドナショナルで勝利をつかむ物語。馬の心理描写が素晴らしかった。
  • ★夢枕獏: 『大江戸恐龍伝』
    真友の立原位貫さんが装幀と各巻扉絵を描いています。