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2016年5月

2016年5月30日 (月)

2016年5月配信 医の散歩道

2016年5月配信 『医の散歩道』(http://www.honyakucenter.jp/walk/walk_50th.html)で臨床保存学を取り上げてもらいました。

全人的アプローチで、文化財のQOLを考える。博物館の「よき臨床医」

第50回 「臨床保存学」の提唱者・神庭信幸さんを訪ねて

このサイトが医学関係と深い関係があることから「臨床」と言う言葉に強い関心を持っていただいたことがきっかけだろうと思います。

そして、もう一つ、医学の世界では、今最も大切な概念になりつつあるQOL(Quality Of Life)について。文化財のQOLについて、私として文字で初めて説明を試みました。文化財の世界に適用するのは、文化財が生物としての生命をもつものでないことから、これまで説明が難しいと感じていました。

今回の内容で、その概念がよりはっきりと私の中でも説明できるようになったかもしれません。

我が家の仲間に家守が加わる

煙突の向こうの部屋の壁に、何やら怪しい影が。

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近づいて見ると、何と、家守(ヤモリ)が居るのではないですか!

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ヤモリは「家守」とか「屋守」とか書いて、家を守ってくれる大切な小動物。今日から我が家の仲間に加わりました。

実はこの家守、鋳金作家の高橋賢吾さんの作品。最近、東銀座にある靖山画廊で開かれた個展に出品された小品の一つです。

高橋賢吾さんは鋳金界の若手ホープ、超絶技巧の持ち主です。どんな技法かと申しますと、厚さ0.1㎜にも満たない生の花びらをそのまま型取りして鋳造するのだそうで、個展にもそれが出品されていました。それがメインの作品でした。

花びらの表面はそれぞれの花の種類によって固有で、表面の色、明るさ、テクスチャーなどは異なります。また、表面にはトライコーム(trichome)と呼ばれる産毛があって、それも見え方に影響を与えます。

高橋さんの凄さは、そのごくごく薄い生の花びらをそのまま型取りして、鋳造する技術を生み出したことです。アルミニウムで鋳込んだ花びらの表面にはトライコーム(trichome)がそのまんま再現されるのだそうです。ただし、あまりにも微細なため、触るとすぐに折れてなくなるのだそうです。

画廊には、幾種類もの花で飾られた作品が出品されていました。鋳造された金属製の花の色や反射の具合などは種類によってそれぞれ異なっています。てっきり、花の種類によって金属の組成が違えてあるもの考えて、高橋さんに尋ねたところ、とどれも同じアルミニウムだけで鋳込まれた花と判り、唖然としました。

つまり、彼の鋳造技術は生花の花びらの極微細な表面状態までも再現していることになるわけです。これもナノテクノと言っていいでしょう。極めて伝統的な鋳造技術にも、現代の先端技術に通じる大きな可能性があるのです。

もしかしたら、車や飛行機のボディに応用できるのではないのでしょうか。濡れないボディ、汚れないボディ。花びらと同じように。

2016年5月22日 (日)

豊かな山からの恵み

鵜養地区は山から流れ出る豊かな水を「堰」と呼ばれる用水路で集落に導き、田んぼや生活用水に使用している。

今は、ほとんどの田んぼで丁度田植えが終わるころで、こちらも何となく一段落という気分に襲われる。

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鵜養地区から山の方に向かうと、直ぐに大量の水が流れる渓流があって、そこから取水している。

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手を伸ばして水に触れると、冷たくて、しばらく入れていると痺れるほどだ。渓流には淵があったり、浅瀬があったりして、それに沿って歩くと変化にとんだ景色を見ることができる。

丁度居合わせた地元の方から、大声を出して歩きなさいと忠告を受けた。熊と出くわすことがあるからね。

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時折訪れる者にとっては、この景色は豊かな里山の暮らしと映る。しかし、年々茅葺の民家は減る一方で、いつまで見ることができるか、保証の限りではない。なんとか残せないものだろうか。何としても残さなければならない景色だと思う。

岩見三内産の黒蕨

秋田空港から鵜養い地区に向かう途中、山菜を販売する小さな店を山中の街道筋に見つけて、立ち寄った。

シケド、サシボ、タケノコ、アブラコシ、蕨などいろいろあるわあるわ。どれもこれも欲しくなるものばかりです。でも、シケドもサシボもなんだか分かりません。

今回はお店のおじさんの勧めと、たまたま居合わせたお客さんの意見に従って、珍しいという岩見三内産『黒蕨』とアブラコシを買い求めました。

普通の蕨と違って黒蕨は希少で、味が濃く、粘りが強いということでした。ただし、その日の朝採れたてのもので、したがって、アク抜きはしてない。お店のおじさんがあく抜きの方法を丁寧に教えてくださった。

秋田市河辺三内にある食堂「やまぶき」流、生蕨のアク抜き法をご紹介しましょう。

1.蕨の根元を1~3センチ程カットして、よく洗って汚れを落とす。

2.カットしたワラビを鍋の底に並べて、ワラビの重量に対し15%程のタンサン(重曹)を蕨に振りかける。この時、冷蔵庫などで蕨を冷やしていた場合、常温に戻るまで次の工程には進まない。

3.鍋に並べた蕨へ沸騰したお湯をかける。かける量は並べた蕨がひたひたになる程度。かけた後は軽く上下させ、新聞紙などを上からかけて蓋をして、6分程放置する。

4.6分経過後、新聞紙の蓋を開けて、温度を測る。60度以上であれば水を足してお湯の温度を60度程度まで下げる。その後は鍋の蓋をして、8時間程度放置する。

5.8時間経過したらよく水洗いして重曹液を洗い流し、完了。

6.食べ方は、色々。マヨネーズ、蕨タタキ、汁物、鍋の具。

アク抜きが終わると重曹液は緑色になりました。そして黒蕨は濃い緑青色に変わっていました。

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秋田鵜養地区は田植えのシーズン

5月21日(土)、秋田県公立美術大学の集中講義に出かけたついでに、鵜養地区を再度訪ねてみた。

今まさに田植えのシーズンで、僅かの田んぼを残して、ほぼ終わりそうな感じでした。

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集落の田舎を流れる「堰」と呼ばれる用水路には、山から流れる水が導かれ、大量の水が勢いよく流れている。この水で泥の付いた農機具を洗ったり、野菜の泥を落としたり、生活にはなくてはならないものだ。

田植えが終わった田んぼに茅葺の民家が映っている。こんな景色をもっと見たいと思う。

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鵜養地区にはまだ数棟の茅葺民家が残っていて、今でも心安らぐ景色を見ることができる。田植えを終えると、一息ですね。

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2016年5月16日 (月)

東北の景色

ゴールデンウィーク明けに陸前高田市を訪れた。

現地では田植えの準備が終わり、あとは苗を植えるばかり。今年はやや寒く、気温も18度を上回ることが少ないらしい。室内での作業は日が当たらないので外より寒く、厚手の防寒具が必要な状況だ。

雨上がりの朝、いつものように早朝散歩を楽しんだ。

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 やっと葉っぱが出てきたところ


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                           朝霧の包まれた山間の里


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                           一関市内で見た早朝の虹

今も続く津波被災資料の処理

陸前高田市立博物館では、あの巨大な津波から5年が経つ今も、大量の被災資料に対する保存処理が継続しています。

津波によって汚れた資料は、まず必要最小限の処置として除菌、脱泥、脱塩が行われます。こうしておけば、資料の急激な劣化をひとまず止めることができます。この処置を安定化処理と言います。

安定化処理を終えた資料にのみ、破損部や欠失部の処理としての本格修理が施されます。安定化処理を終えた資料はまだ十数万点。残りは三十万点もあります。

旧生出小学校は現在は陸前高田市立博物館として使用されています。展示室こそないものの、小学校を利用した市立博物館の中では、資料収集、整理、調査などの通常業務とともに、被災資料の安定化処理がコツコツと続けられています。

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                      臨時職員の方々紙資料の洗浄作業

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                 臨時職員の方々による金属製品の洗浄作業   

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     元漁師さんの村上覚見さんの指導を受けながら漁労用具の調査

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    教室の黒板には作業の順序が記されているが、訪れる度に内容が新しくなっている

2016年5月 1日 (日)

雪景色

今年の3月初めに陸前高田にお邪魔した時は、大雪が降りました。その日の早朝、いつもの散歩の時間に移した高田の冬景色です。

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4月9日の上野の桜吹雪によってできた雪景色です。

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気になる1冊

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    海鳥社 2012 日本設計の池田武邦さんがハウステンボスの設計にかけた情熱とその源泉について、ドキュメンタリー的に記されている。茅葺に興味があったので手に取ってみたが、ハウステンボスの設計思想とその実態について初めて知ることが多く、ぜひ一度行ってみたくなった。
  • ★ヨースタイン・ゴルデル著 猪苗代永徳訳: 『オレンジガール』
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    美術品梱包輸送技能取得士認定試験の制度が始まって4年が経ちます。認定試験を受ける人のための教科書であるとともに、美術品の展示、輸送に携わる人々にもとても役立つ本です。
  • ★ケヴィン・ヘンクス著 多賀京子訳: 『マリーを守りながら』
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    60歳で定年後、特任研究員として再雇用された時、これから先の時間を如何に過ごすか想像できなかったとき、ご隠居という言葉を理解しようと思って読んだ本。
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    イギリスの山肌に描かれた巨大な白馬の絵。その起源を求めて太古の物語にヒントを得て描かれた本。敵に滅ぼされた部族に生き残ったわずかな人々が新天地に旅立っても、彼らの先祖が馬乗りの名手であったことを地上に永遠に刻み込むために、敵方のために描いた白馬。
  • ★K.M.ベイトン著 山内智恵子訳: 『駆けぬけて、テッサ』
    血統には恵まれてはいるが、視力に問題を抱えたサラブレッド・ピエロとともに、自分の道を懸命に探し続ける少女テッサが苦難を後超えて、グランドナショナルで勝利をつかむ物語。馬の心理描写が素晴らしかった。
  • ★夢枕獏: 『大江戸恐龍伝』
    真友の立原位貫さんが装幀と各巻扉絵を描いています。