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2016年3月

2016年3月23日 (水)

東日本大震災から満5年

2月25日(木)17:20~17:28に放送されたNHKラジオ第一放送・夕方トピック「津波被災文化財の再生に挑む」に電話出演して、現状を紹介しました。その内容をご紹介します。

アナ 神庭さんたちが修復を続けているのは、岩手県の陸前高田市立博物館が保管していた文化財が中心で、重要文化財などだけではなく、生活に密着したものが多いようですね。

神庭 地元の伝統芸能で使われてきた着物や、漁の道具、昆虫の標本など。その土地に暮らして着た人々が「ふるさとの記録として大切にしてきたもの全て。

アナ この5年間で、どのくらいの文化財が修復できたのですか?

神庭 陸前高田市で回収できたのはおよそ50万点。そのうち抜本的な修復が完了したものは、まだ1万点程度。全てを完全に修復するには、まだまだ時間がかかる。現場では現在も試行錯誤が続いている。そして、それを全国の専門機関が支援している。

アナ こうした作業を継続してきた中で、地元の人たちの反応は?

神庭 地元でには、本格的な展示施設がまだないため、修復できた文化財は、未だ市民に公開できていない。一方で、修復を終えた文化財は全国各地の博物館で展示を行い、特別展が行われている。陸前高田市民以外への公開はこの5年間で相当に進んだ。そうした機会を通じて地元でも、被災した文化財修復の話が少しずつ知られるようになり、建物はないけれども博物館を支援しようという動きが地元市民たちの中でも広がってきた。

アナ 具体的には?

神庭 例えば、寄贈の申し込み。地元に伝わる「高田人形」は1点しか残らなかったが、それを知った市民から、寄贈の申し出があった。

修復の手伝い。かつて地元の漁で使われていた道具が被災した事を知った、元漁師のお年寄りが一時保管場所の小学校を訪問。今では、かつて身に付けた漁具の修繕技術を生かして、修理を手伝っている。

届け出。博物館から流出した資料を、遠隔地で見つけた市民から「ひょっとして博物館の所蔵品では?」という届け出があった。昔から市民の間では分からないことがあったら博物館に聞けという伝統が功を奏した。

同様の事例では、海を越えた届け出もあった。震災から2年たった2013年に、アメリカ西海岸のクレッセントシティに小さな船が漂着。現地の大学で津波研究をしているロリー・デングラーという教授が船を調べ、岩手県立高田高校が所有していた実習船「かもめ」であることを確認。そのことを知った現地「デルノート高校」の生徒たちが、この船を高田高校に返還するために募金活動を開始。 米国で支援の輪が広がり、「かもめ」は無事高田高校に戻ってきた。というお話。

この出来事をきっかけに、高田高校と現地のデルノート高校の間で、相手校を互いに訪問しあう交流が始まった。この一連の経過は、昨年末に「いつまでもともだちでいようね」という一冊の絵本になった。

アナ 修復作業の継続によって、改めて見えてきた事は?

神庭 学術的に価値あるものだけではなくは当然として、生活と密着してきたものや地元の人たちが守ってきた大切にしてきたものを再生して残していく事の大切さ。

例えば、「アカショウビン」という小さな鳥のはく製。10年ほど前に、地元の小学生たちがみつけたきれいな鳥の死骸を、はく製にして博物館に収めたもので、それ以来見つけた子どもたちにとても愛されていた。そこで「子どもたちに愛されていたのならば」という事で修復をした。その後、鳥を見つけた子どもたちの後輩にあたる小学生たちが今度剥製が特別展のために東京国立博物館へ行くと聞かされたとき、戻ってくるのかと心配したそうだ。

アナ こうした取り組みをすることの意義はどのような事?

神庭 大規模災害が発生した場合、まずは人命と生活を守る事が第一。しかし、その後に被災地が本当の意味で復興を果たすためには、「その土地の文化の記憶」を保護し、再生することも地域に暮らし「地域に戻って来るた人たちの心の拠り所」としてとても大切な事だと思う。真の復興は、建物などが整うだけでなく、被災前の「普通」の状態に戻る事だと思う。まだまだ先は長いが、必ず保護した全ての文化財を再生させる。

保存科学40周年特別展

韓国中央博物館の保存科学分野が今年で40年を迎える。

つい先ごろまでは保存科学チームと呼ばれていたが、現在は保存科学部。博物館運営には欠かせない重要な位置づけを与えられている。名称だけではなく、それに見合った人とスペース、設備を備えた充実した陣容になっている。

40周年を記念して、保存と修理を紹介する特別展が開催されている。会場の様子を2枚の写真でご覧いただきたい。

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写真が間違っていると思った人もいるかもしれないが、れっきとした展示場風景だ。観覧者が見える写真だとよくわかる。

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特別展会場内にガラス張りのアトリエを設けて、その中で実際の修理作業を行っている。

最近は、バックヤードを公開することが当たり前の時代になってきた。職員、専門家、市民、行政、企業が博物館とどのような関係をもつかを色々と模索している時代でもある。博物館へのアクセスを、博物館が分かり易く丁寧に、かつそれぞれの社会の構成員の必要性に応じてきめ細かく考えていく必要がある。

博物館へのアクセスとは、交通アクセスという場合もあるが、それだけではなく博物館が保有するさまざまな資源へのアクセスという意味である。文化財、施設、人、活動、イベントなどさまざまな対象がある。

今さら言っても仕方ないが、オープンラボは東博でもだいぶ以前に構想したアイデア。その時は次期尚早で実現できなかった。

2016年3月16日 (水)

韓国国立中央博物館の保存科学40周年記念式典

3月7日、韓国ソウルにある国立中央博物館にお邪魔し、保存科学部の40周年記念式典に出席した。

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キム・ヨンナ館長が40の数字が載った記念の大きなケーキに入刀して、40周年を祝った。

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キム館長を囲んで韓国伝統文化学校の李午憙先生と記念写真

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李容喜保存科学部長を囲んで記念撮影。左から同僚で現在東博保存修復室長の土屋裕子さん、ユ・ヒェソン保存科学部学芸研究官、李容喜保存科学部長、神庭、千周鉉保存科学部学芸研究官。

ユ・ヒェソンさんの紹介がブログ「十三夜日記」に掲載されていますので、ご覧ください。

http://tunku582.seesaa.net/article/434700769.html

箱根の山は雪景色

年明けから少し仕事が立て込んだので、休養をかねて一年ぶりに箱年に出かけた。

昨年は大涌谷の小規模噴火や、定年後の経済的なことなど、いろいろとあって、大好きな箱根もご無沙汰。

定年からほぼ一年が経ち、前から続けていたさまざまな事業が、3月末でほぼ終わるということもあり、休養がてら一年ぶりの箱根。

13日の日曜日は思いの外よく晴れ、当日は九頭竜神社の月次祭の日でもあり、箱根芦ノ湖周辺は沢山の人でにぎわっていた。窓から眺める芦ノ湖はいつものように穏やかで、じっと見ていると心が安らぐ。竜神様に魅入られてしまうのだろうか。

翌日は、箱根町から箱根スカイラインを通って三国峠を超え、さらに乙女峠から裾野インターへ抜けて東名高速道路で帰宅した。

途中、三国峠は大雪で辺り一面ホワイトアウト。もう少し出発が遅れていたら閉鎖になる状況だった。もしかしたら今季最後の雪の中のドライブかも。

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2016年3月 4日 (金)

ロリー・デングラー教授が毎日新聞に登場

3月11日に開催されるシンポジウム『津波被災文化財再生への挑戦 ‒東日本大震災から5年‒』で基調講演をするロリーデングラーさんが毎日新聞の取材に応じ、その様子が記事になりました。電子版で読むことができます。

http://mainichi.jp/articles/20160302/ddm/041/040/118000c

シンポジウムでは日本と太平洋北西岸地域の地理学的、文化的なつながりについてお話し頂く予定です。

デングラー教授は、2011年3月11日に発生した東日本太平洋沖地震の6週間前、そして発生から6週間経った4月に津波被害調査チームの一員として日本を訪れています。

今回のシンボジウムでは日本と北カリフォルニアで生じる地殻変動の類似性、そして1700年のカスケード地震と2011年の東日本太平洋沖地震で発生した津波の影響、また津波で流された小さなボートが、遠く離れた東北地方とカリフォルニアの両地域をどのように繋ぎ合わせたのかについての講演です。

シンポジウム 津波被災文化財再生への挑戦‒東日本大震災から5年‒

津波被災文化財再生への挑戦 ‒東日本大震災から5年‒

開催のご案内

東日本大震災の発災から5年が経過します。 被災地では懸命の作業が続いていますが、復興にはまだまだ時間が必要とされています。  被災した文化財については、文化財レスキューが一段落した今、現地では被災資料の再生に重点が移っています。 本シンポジウムでは、膨大な数にのぼる安定化処理や修理作業の状況と課題、 そして博物館の再生が現在どんな段階を迎えようとしているのかを紹介します。 また、今後予想される大規模災害に対して、 何が注目され、今どんなことが始まっているのか、6 人の専門家が討論します。

開催日:平成28年3月11日(金) 13 時30 分~ 17 時00 分

会場:東京国立博物館平成館大講堂/定員:300名(事前申込み、先着順)/参加費:無料

主催:津波により被災した文化財の保存修復技術の構築と専門機関の連携に関するプロジェクト実行委員会

シンポジウム 津波被災文化財再生への挑戦‒東日本大震災から5年‒

【内容】

ハンボルト大学津波防災センターのロリー・デングラー教授は、被災地から太平洋を漂い2年かかってカリフォルニア州クレセントシティに漂着した練習船かもめを確認し、陸前高田へ返還するきっかけをつくられました。基調講演では専門の津波防災、そしてクレセントシティと陸前高田市の高校生の間に生まれた友情と絆、そこから生まれた絵本についてお話しいただきます。

シンポジウムの最後は、CD「天に響け」で津波被害から復活したリードオルガンの演奏・作曲を担当したピアニストの中村由利子さんの演奏で、復興への祈りを東北に届けます。

なお、会場前でCDや書籍の販売があります。

13:30-13:40  開会挨拶 東京国立博物館長 銭谷眞美

13:40-14:40  基調講演「大津波と被災地交流(仮)」米国ハンボルト大学津波研究センター教授 ロリー・デングラー

14:46-14:47  黙祷

14:48-15:00 休憩

15:00-16:30 パネルディスカッション

 「復興について」半田昌之(日本博物館協会)、熊谷 賢(陸前高田市立博物館)

 「技術について」赤沼英男(岩手県立博物館)

 「組織について」栗原祐司(国立文化財機構)、益田兼房(国立文化財機構)

 「使命について」神庭信幸(東京国立博物館)

16:35-16:55  ピアノ演奏「天に響け」他 中村由利子(ピアニスト・作曲家)

16:55-17:00  閉会の言葉 岩手県立博物館長 中山 敏

【申し込み方法】

Eメールにて、お申し込みください。

件名を「シンポジウム参加希望」として、

①氏名とふりがな、②連絡先電話番号、③E メールアドレスをお書きください。

※事前にお申込みください。先着順といたします。

日本博物館協会「津波被災文化財シンポジウム係」

E メール:webmaster@j-muse.or.jp

電話:03-5832-9108 FAX:03-5832-9109

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    海鳥社 2012 日本設計の池田武邦さんがハウステンボスの設計にかけた情熱とその源泉について、ドキュメンタリー的に記されている。茅葺に興味があったので手に取ってみたが、ハウステンボスの設計思想とその実態について初めて知ることが多く、ぜひ一度行ってみたくなった。
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    血統には恵まれてはいるが、視力に問題を抱えたサラブレッド・ピエロとともに、自分の道を懸命に探し続ける少女テッサが苦難を後超えて、グランドナショナルで勝利をつかむ物語。馬の心理描写が素晴らしかった。
  • ★夢枕獏: 『大江戸恐龍伝』
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