« 中村由利子さんが弾く『天に響け』いよいよ発売へ‐CD完成 万歳 | トップページ | 国破れて山河あり »

2015年8月19日 (水)

オレンジガール 命のバトンタッチ

オレンジガールという本を読んだ。数年前に上野の東京国立博物館のすぐ近くにある国際子ども図書館で見つけた本だ。何年か越しで今年の夏にやっと読むことができた。

早逝した父親が息子に宛てた手紙が玩具の中から見つかったのは、かなり時が経ってからで、その手紙には息子に宛てた重大な問いが残されていた。その問いに辿り着くまでに、父親と母親との馴れ初めが綴られている。実は手紙の中で重要な人物として描かれているオレンジガールとは母親のことであると後で解る。

不治の病に倒れ、最愛の妻と息子の元を去らなければならない父親は、生きることの意味、生をつなぐことの意味を息子に問いかけている。

『いままさにすべてが創られようとしている約百五十億年前に、きみがこの物語(宇宙創成のこと)の入り口に立っているところを想像してごらん。そのとき、きみは自分がいつかこの惑星に生まれるか生まれないかを、自分で選ぶことができるんだ。どの時代に生まれるかはわからない。どのくらい長く生きられるかもわからない。でも、とにかく、しばらくの間は生きていられるものとする。ただし、ひとつだけ知っておかなければいけないことがある。それは ー もしもきみが、機が熟して、あるいは聖書のことばで言えば「時満ちて」、この世に生まれることを選んだとしたら、そのときは、いつかまた、すべてをあとに残してこの世から去ることも覚悟しておかなければならない、ということだ。』

『さあ、きみだったらどっちを選ぶ、ゲオルグ(息子の名)?もし、神さまが - まあ、宇宙のえらい妖精でもなんでもいいけれど - きみにそれを選ぶ権利を与えてくれたとしたら、きみは、いつかこの地上でたった一回の限りある人生を生きることを選ぶかい?短い人生だろうと、長い人生だろうと、十万年後に生まれようと、一億年後に生まれようと?』

『それとも、きみはこのルールが気に食わないからといって、人生ゲームに参加するのを拒むかい?』

息子ゲオルグは手紙を読みおわってから、父が手紙のなかで言うようにゆっくりと時間をとって考え、そして結論をだした。たとえ、すべてを後に残してこの世から去らなくなる時がくるとしても、自分は生まれることを選ぶと。そして与えられた人生を謳歌して生きると。それで父はすべての心配事から解放されて安らかに眠ることができると。それが自分に命をつないでくれた父親に対する答えだ。

私は自分の意思で生まれたのではない。僕を生んでくれた両親もそうだ。祖父母たちもそうだ。しかし、両親は私を生むことをやめようとはしなかった。祖父母たちもそうだ。だから、こうして命のバトンタッチがなされている。

« 中村由利子さんが弾く『天に響け』いよいよ発売へ‐CD完成 万歳 | トップページ | 国破れて山河あり »

心と体」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: オレンジガール 命のバトンタッチ:

« 中村由利子さんが弾く『天に響け』いよいよ発売へ‐CD完成 万歳 | トップページ | 国破れて山河あり »

2021年11月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ

気になる1冊

  • ★井川 聡: 『超高層から茅葺へ』
    海鳥社 2012 日本設計の池田武邦さんがハウステンボスの設計にかけた情熱とその源泉について、ドキュメンタリー的に記されている。茅葺に興味があったので手に取ってみたが、ハウステンボスの設計思想とその実態について初めて知ることが多く、ぜひ一度行ってみたくなった。
  • ★ヨースタイン・ゴルデル著 猪苗代永徳訳: 『オレンジガール』
    命のバトンタッチの意味。
  • ★籔内佐斗司: 『壊れた仏像の声を聴く 文化財の保存と修復』
    一緒に仕事をする機会には恵まれませんが、いつも気になっている方が仏像と修理について書き下ろした本です。
  • ★バージニア・リー・バートン 著 まなべ まこと 監修 いしいももこ訳: 『せいめいのれきし』 改訂版
    恐竜研究の第一人者・真鍋真氏が監修した絵本。絵本と言ってもかなり高度な内容です。生命のバトンタッチを分かりやすく描いたもの。
  • ★日本博物館協会 (編集): 『博物館資料取扱いガイドブック-文化財、美術品等梱包・輸送の手引き-』
    美術品梱包輸送技能取得士認定試験の制度が始まって4年が経ちます。認定試験を受ける人のための教科書であるとともに、美術品の展示、輸送に携わる人々にもとても役立つ本です。
  • ★ケヴィン・ヘンクス著 多賀京子訳: 『マリーを守りながら』
    自分にも娘がいるが、少女のころの彼女の気持ちを理解、解りあえることは難しかった。父親と幼い娘の間の気持ちの揺らぎを描いた作品。
  • ★藤沢修平: 『三屋清左衛門残日記』
    60歳で定年後、特任研究員として再雇用された時、これから先の時間を如何に過ごすか想像できなかったとき、ご隠居という言葉を理解しようと思って読んだ本。
  • ★ローズマリ・サトクリフ著 灰島かり訳: 『ケルトの白馬』
    イギリスの山肌に描かれた巨大な白馬の絵。その起源を求めて太古の物語にヒントを得て描かれた本。敵に滅ぼされた部族に生き残ったわずかな人々が新天地に旅立っても、彼らの先祖が馬乗りの名手であったことを地上に永遠に刻み込むために、敵方のために描いた白馬。
  • ★K.M.ベイトン著 山内智恵子訳: 『駆けぬけて、テッサ』
    血統には恵まれてはいるが、視力に問題を抱えたサラブレッド・ピエロとともに、自分の道を懸命に探し続ける少女テッサが苦難を後超えて、グランドナショナルで勝利をつかむ物語。馬の心理描写が素晴らしかった。
  • ★夢枕獏: 『大江戸恐龍伝』
    真友の立原位貫さんが装幀と各巻扉絵を描いています。