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2014年8月17日 (日)

丁髷姿の自分

陸前高田市立博物館が所蔵する『高田歌舞伎装束』の中に、幾つもの鬘(カツラ)が含まれている。

それらもやはり津波で被災していて、他の多くのものと同じように、安定化処理と本格修理を必要とする資料だ。私も長らくこの道を歩んできたが、鬘の保存修理という課題に出くわしたのは、今回が初めてである。

いろいろと考えた挙句、以前番組でお世話になったNHKのディレクターさんに相談をしてみたところ、大河ドラマで使用されるかつらを一手に引き受けているNHKアートさんを紹介していただくことになった。

そこの白田さんと山田さんに現地まで足を運んでいただき、鬘の状態調査を行っていただいた。そして昨年度は2個の鬘をボランティアで処理していただくことができた。今年も11月頃には何個か鬘を陸前高田からNHKアートさんに運び、修理をしていただく予定になっている。有難いことだ。

先日修理の方法などの確認のため、渋谷のNHK放送センター内のNHKアートさんを訪ねた。いろいろと話を聞いている中で、頭と鬘の形の関係について興味が湧いた。役者さんのために新たな役の度に作ってきた鬘は、名前入りで段ボール箱に保管されている。例えば、一つの箱に何個か鬘が入れてあって、箱の外側に「西田敏行」、「竹中直人」などの名前が書いてあって、その鬘をほかの役者が使うときには段ボールにかいてある名前を頼りに、頭にフィットする鬘を探すということだ。つまり、鬘の大きさや形は記号で表すのではなく、最初にかぶった人の名前で管理されているわけだ。

そこで、自分の頭にぴったりと合う鬘はどれですか、と聞いてみたところ、一寸だけ考えてすぐに出してくれた鬘を、鏡の前で合わせてくれた。ぴったしの大きさではないか。その鬘を最初に被った俳優さんは、最近売り出し中の若手で、かなりかっこいい人だということだ。自分の頭の形と大きさがその役者さんと同じであるとは、うれしいと言っていいのか、何と表現したらいいのだろう。

この道40年の職人さん三村要さんと一緒に記念撮影。生まれて初めて本物の鬘を着用したのだが、月代(さかやき)は自分自身の素肌で間に合った。一寸複雑な気持ちだ。

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コメント

大変よくお似合いだと思います。

これ以上のコメントは差し引かさせていただきます。

m(__)m

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