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2013年1月20日 (日)

保存という名のひかり(47)東京芸術大学大学院美術研究科保存科学専攻(4)

東京芸術大学大学院美術研究科保存科学専攻(4)

小口先生は芸大で古墨の研究に力を注がれ、研究のために芸大には透過型電子顕微鏡が設置された。先生の指導を仰ぐ学生たちは、先生の研究に加わるのではなく、自らがどこからかテーマを探してこなければならないので、文化財や美術に素人な学生にとってそれは大変に辛いことであったと思う。幸い私は歌田先生を通じて明治初期油彩画の下地組成という、立派なテーマを頂いていたので、この点に関して苦労した覚えはない。1期生の沢田さんは奈良時代の塑像の制作技術、3期生の三浦さんは壁画と地下水の関係などであったように記憶している。

当時の保存科学はどちらかと言えば材料科学を基礎として、文化財に使用された材料や技術を解明することに力点が置かれ、保存のための方法論として環境や修理に関することは比較的注目しないままであったと思う。基本的な保存科学の姿勢としてそれは今でも続いていると言ってもいいかもしれない。 文化財を守るためには対象となる文化財のことを理解しなければならない。それは正しいのだが、理解の程度と処置の内容との関係が重要で、完全に理解できなければ手が付けられないと言うわけではない。そうなると何もできなくなってしまう。しかしこういう言い方をするといい加減な態度という印象を与えかねない。今、私は保存科学という言葉よりは、むしろ臨床保存学という言葉をもちいて文化財の保存の実践について説明し、語ろうとしている。これまでの保存科学では、基礎の一部に従事するだけで、全体を見ないまま終わってしまいそうで恐ろしい。

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