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2012年8月12日 (日)

保存という名のひかり(46)東京芸術大学大学院美術研究科保存科学専攻(3)

東京芸術大学大学院美術研究科保存科学専攻(3)

 その保存科学教室での私のテーマは、歌田先生と共に調査していた明治初期の油彩画から得られたカンバスとそれに塗られた下地についての研究である。森田先生から教わったマイクロスポットテストの他に、保存科学研究室にあった蛍光X線分析装置やX線回折分析装置を使って、より客観的で正確な科学データを獲得しながら、明治初期の下地の組成についてまとめていくことでした。最終的にはこれが僕の修士論文となるわけだが、当時同級生の妻の目にはカタログのようで掘り下げがいまいち足りない内容と映っていたようで、ことある毎にそのことを言われてしまう。そのころはまだ下地のクロスセクションを詳細に分析すると、元素以上に面白い情報が様々得られると言うことは、まだ判っていなかった。それは後に歴博での研究で明らかになる。

 私の主任教授の小口八郎先生は、北海道大学の低温研究所からこの芸大の保存科学教室に移ってこられた先生で、当時日本で保存科学を教育する場はこの芸大の大学院だけであった。教育しても就職先が確実にあるわけでもないが、このころの日本は国立系の機関に保存科学の専門家を配していくきわめて珍しい時期である。芸大保存科学第1期生の沢田正昭さんは奈良文化財研究所、2期生の中川さんは鳴門教育大学、3期生の三浦定俊さんは東京国立文化財研究所、永嶋正春さんは奈良の正倉院事務所、4期生の肥塚隆康さんは奈良国立文化財研究所と勢いよく社会に送り出してきたが、そう長くは続かず勢いは弱まったままである。まして、多くの大学に文化財保存に関する講座が開かれた今、就職先は益々狭き門となっている。

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