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2011年6月 9日 (木)

保存という名のひかり(その36 歴博での研究(5))

歴博での研究(5)

それらの研究と同時に、展示照明が展示物の劣化に与える影響について、光の波長と材質、そして照射するエネルギー量との関連を研究し始めた。

展示場の明るさは照度と呼ばれる明るさの単位を用いて表示されるが、それは人間の目にとっての明るさあるいは刺激の数量であって、照らし出される対象物が受ける影響を表示するものではない。照明器具から放射される光の量と強さ、それが展示物に与える影響の量と質について定量化を目指して研究を始めたが、今日でも結論を得るに経ってはいない。

天然染料で染めた新しい染織品は数年経てば一目瞭然なほど退色が進むものである。しかし時代を経た古い裂の退色は判りにくいし、そもそも数年で退色するような照明は使うことが出来ない。きわめて微妙な変化を数量化して、未来を予測するために、この点を明確にして、展示期間と保存との関連をはっきりとさせたいと考えている。こうした研究にとりつかれた研究者はそんなに多くはないが、何人かいる。ロンドン・ナショナル・ギャラリーの保存科学者David Soundersは実験によって波長毎の影響を各種の色材について調べている。David SoundersはGarry Thomsonが定年を迎える前の年に採用された新人で、Thomsonの後継者である。丁度僕がThomsonさんを慕って1カ月お邪魔した時に、間もなく新人が入ると言っていた人物がDavid Soundersだった。

古くから照明と褪色の関係を追求し続けていたのがR.L. Fellerで沢山の論文がある。今でも読み切れていない物が手元に残っていて、何れ読んでおかなければと思っている論文である。Stephan Michalskiもまた優れた理論家であった。照明と劣化の予測をすでに発表されている数々の論文のデータを用いながら、合理的に示している。

この時期の私の論文は以下のものである。

神庭信幸:博物館展示照明が色材料に及ぼす作用効果(1)、国立歴史民俗博物館研究報告、第16集、pp263-289、1988年

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