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2011年6月 8日 (水)

保存という名のひかり(その35 歴博での研究(4))

歴博での研究(4)

当時のロンドン・ナショナルギャラリーにはSarah Staniforthという僕と同年輩で、女性の保存科学者が在籍していた。彼女は輸送中の環境変化について、1985年当時から特別の関心を持って研究を進めていた。彼女は後に、ナショナルトラストの保存責任者としてここを離れる。

彼女が進める輸送中の梱包ケースの研究は、それまで行われてきた登石健三氏やN. Storowが進める理論的な研究から、実際のケース内の温湿度を計測しながら、危険性や改善点を明らかにしようとするものであった。確か、このころから小型の温湿度データロガーが比較的廉価で入手可能となり、それをケースの中に一緒に梱包して、後でデータを回収してから、環境の状況を確認することが可能になった。その頃のロガーは小さいと言っても弁当箱のような大きさであった。それでも、N. Storowが列車で輸送中の梱包ケース内の温湿度を測定するために、内部に毛髪自記録計を設置したのとは、隔世の感がある。

日本では登石健三先生が梱包ケース内の温湿度変化の予測に関し、理論的な研究を行った以外、この分野に積極的に関わろうとする研究者は長くいなかった。この分野の研究を考え始めたころ、野村コレクションという小袖を海外に貸し出す機会があったので、丸山伸彦さんと共に調査を始めたのが最初である。以来、梱包ケース内の温湿度の測定と、研究室での実験を行いながら、ケース内の温湿度変化を予測することができるようになった。その時書いた論文が、

神庭信幸:輸送中に生じる梱包ケース内の温湿度変化、古文化財之科学、34号、pp.31-37、1989

KAMBA, N., "Variations In Relative Humidity And Temperature As Measured In A Packing Case", Preprints of the 9th Triennial Meeting of ICOM Committee for Conservation, pp.405-409, 1990, Dresden

その後、さまざまな機会を見つけては、梱包ケース内の温湿度を計測し、得られた結果から梱包の方法について指針を考えて行った。現在国士館大学教授の西浦忠輝さんとは、

KAMBA, N., NISHIURA T., "Measurement of the dimensional change of wood in a closed case",  Preprints of the 10th Triennial Meeting of ICOM Committee for Conservation, pp.406-409, Washington 

さらに、当時ブリヂストン美術館の田中千秋さんと一緒に、梱包ケース内を測定していきました。

神庭信幸、田中千秋:輸送中の梱包ケース内における温湿度環境と調湿剤の効果、古文化財之科学、38、pp.28-36、1994

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