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2011年2月 9日 (水)

保存という名のひかり(その28 森田恒之先生の教え1)

森田先生の教え(1)

東京芸術大学大学院保存科学研究室に在籍中、当時東京都美術館に学芸員として勤めておられた森田恒之先生から顔料のマイクロスポットテストというのを教えていただいた。油絵の画面から採取した1mmに満たない微少な絵具片を、プレパラートガラスに載せ、顕微鏡で覗きながらそれぞれの層に分離した後、試薬を滴下して、反応によって生じる結晶を確認して絵具の中の顔料に含まれる主要な金属成分を同定する方法である。

例えば鉛白の場合は、硝酸との反応で生成される硝酸鉛の結晶をプレート上に認めたら、鉛の存在を確認したことになる。この作業は、直径5mmのガラス管をブンゼンバーナーで熱し、飴状に柔らかくなったころを見計らって、ガラス管を両側に引くと管が針状になる。針の先端を折ると極めて微細なピペットができあがる。試薬瓶の中にこの手製のピペットの先端を入れ、ガラスの先端にわずかな試薬が上がったところで、反対側のガラスの穴を指先で塞いで試薬をピペットに留めた状態で瓶から引き揚げ、顕微鏡下においた微少な絵具サンプルに、顕微鏡を覗きながら滴下して反応を見る。そのときの森田先生の姿は右手にピペット、左手に針、そして口には別のピペットを咥え、それらを器用に操りながら絵の具の謎解きを進めて行かれる。

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