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2011年2月11日 (金)

保存という名のひかり(その30 森田恒之先生の教え3)

森田先生の教え(3)

しかし、僅かゼロコンマ数ミリの幅の絵具の中に重なり合う絵具の層は、作家の創作の手順と材料を反映する揺るぎない証拠であり、絵全体を考えながら片隅から得られた情報をどのように理解して行くか、随分と勉強になった。サンプリングはごく限られた場所でしか行わないし、できるだけ少量しか採取しないので、自らに厳しくすればするほど、推論も困難にならざるを得ない。

もともと、日本では文化財から試料をサンプリングして行う材質分析は、特に美術工芸分野の作品に対しては積極的ではない。国宝や重要文化財に対しては、現在まずあり得ない方法である。いつのころからそのような考え方が支配的になったのかは明確ではないが、遠い昔、絵具の分析を依頼された分析化学の専門家が作品から採取した量が、想像を超えた量であったため、サンプリングが敬遠されるようになったというような、本当とも作り話ともつかない話を聞いたことがある。

森田先生はベルギーの王立文化財研究所に国費留学し、そこであの有名なコールマン博士から直接分析について手ほどきを受けた経験をお持ちの方だ。当時機器分析よりも、前述した顕微鏡を覗きながら行うマイクロスポットテストが一般的であったし、必要なサンプル量が最も少ない方法であった。欧米ではサンプリングは否定される方法論ではなく、必要なものとして受け入れられている。長い歴の中でサンプリングの量についてはいろいろな変遷はあったと想像するが、少なくとも1960年から1970年代にはマイクロスポットテストは確立していた。だから、私にとってのサンプリングの量は、1mm以下の量から始まった。

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