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2011年2月10日 (木)

保存という名のひかり(その29 森田恒之先生の教え2)

森田先生の教え(2)

また、微量な絵具をポリエステル樹脂に埋め込んで固め、絵具の重なりの方向に垂直に真っ二つにカットし、カットした面を丁寧に磨きあげると、綺麗な地層のように重なり合った絵具の断面が観察できる。これをクロスセクションと呼び、絵画の科学分析にはなくてはならない大変に役立つ方法である。クロスセクションの作製に使用するサンプルの量は大きさで言えば見かけ0.5mm程度。重さで言うと数マイクログラムである。このようにごく微量の絵具サンプルのクロスセクションを失敗なく、かつ綺麗で分かりやすい状態に仕上げるためには、かなりの熟練した技術が必要となる。森田先生の元でスタートした絵具の分析はそれ以後私の仕事の重要なパートとなる。

もっとも、現在はX線回折分析、蛍光X線分析、蛍光X線分析装置つき走査型電子顕微鏡など様々な分析装置を駆使して、もっと正確で客観的データを得ることが可能となっている。特に、クロスセクションにした絵具の重なりを電子顕微鏡下でそのまま分析して、どの層に何の元素が含まれるか判るようになった現在、都美館の地下でマイクロスポットテストを駆使して、顔料の推定を行わざるを得なかった当時の私たちは、その分析法が使いたくて仕方がなかった。しかし、手元には機器はなく、使わせてもらう手だてもなく、いつの日かできることを夢見て、手作業のマイクロスポットテストとクロスセクション作りに磨きをかけていった。

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