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2010年10月13日 (水)

保存という名のひかり(その21 恩師歌田眞介先生との出会い2)

恩師歌田眞介先生との出会い(2)

歌田先生から、当時東京国立市にあった創形美術学校修復研究所に遊びに来ないかと誘われ、何も分からないまま兎に角出かけて見てみようと、約束の日に国立へ出かけた。研究室は狭い場所であったが、いろいろなテストピースが壁に吊り下げてあって、各種の工具が壁に整然と並んでいたのが、今でも目に焼きついている。資料を整理して保管するためのキャビネットが部屋の片隅にあって、およそ作家養成の専門学校には似つかわしくないような部屋の景色であった。

そこには井上さん、三山さんの二人の助手の方が、歌田先生の指導の下で修復作業に取り組んでおられた。その場で井上さんの作業の様子を見たとき、何だか分からないけれど目が醒めるような思いに鳥肌が立ったように思う。しばらく忘れていた手作業、頭の中で考えるだけで、鉛筆を握る以外には指先をほとんど動かすことのなかった高校、大学の7年間を経て、幼い頃のものづくりに熱中した日々の感覚を思い出した。しかし、その動きは指先に頭脳があるようで、私には体験したことのないものであった。

その日から毎週決まった曜日に研究室に通い、部屋の一角で皆さんの仕事を黙って眺め、休憩のお茶の時間に会話の輪の中に恐る恐る加わった。何せ、物理一筋、作家の人たちとはおよそかけ離れた世界で過ごしてきた人間が、一夜明けてその只中にいるわけである。どこに身をおいたらいいのか、自分の経験が何にも役に立たないような気がして、自分は本当に役に立つのか、そんな思いに捕らわれながら数ヶ月をすごしたように思う。ようやく何となく修理とは、修理のときに行う調査とは何か、少し理解が進んだかなと思った頃、歌田先生は自分を仕事先に連れて歩くようになった。

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