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2010年8月26日 (木)

保存という名のひかり(その16 海外留学5)

海外留学(5)

 大きな無垢の木材で作られた扉は固い石にはめ込まれるように閉じる。行きずりの旅人にとっては、その扉の中には絶対に入ることができないと諦めるほど、扉は固く閉じる。だから、外からは決して中の様子をうかがい知ることは出来ない。しかし、一旦その中に入るとなんと素敵な空間でしょう。中庭には燦々と日が射し、大きなオリーブの木の枝の下には涼しげな木陰ができる。住人たちは思い思いの場所に陣取って、自らの時間を読書、昼寝、瞑想、勉強、おしゃべりなど、自由に過ごしている。

 神父様が一緒に住んでいるせいか、学生たちは極めてまじめである。2歳半になる長男の高明は学生たちによく可愛がられ、たっぷりと遊んでもらった。ロンドンで買った2階立てバスの玩具が中庭をあちこち走リ廻っていた。

 食事は建物の中にある巨大な食堂の一角にあるキッチンまで出かけて行って作り、その巨大な食堂で3人きりで食べる。食堂には優に30人は腰掛けられる長いテーブルがあり、その一角に3人が陣取るのである。自分たちの部屋からその食堂まで行くのに途中真っ暗な階を何階か降りていくのだが、そこはチャペルのような場所があったり、よくわけがわからない。

 しばらくするとパレルモ出身の40前後の確か建築を学ぶ男性二人がキッチンで一緒に食事を作るようになった。さらに寮にしばらく滞在することになったベルギー人のくりくりの金髪の若い男子学生が加わり、夕食時の食堂は賑やかになった。ところが食後にちょっと格好いいベルギー人学生が聞くに堪えない下手なヴァイオリンを弾きはじるものだから、ぶ男のパレルモ人がうるさがって「うるさい」と大きな声で怒鳴ると、ベルギー人学生は「自分の勝手だ」と、いつも口論になる。こうしてお互い罵りあう姿を日本人の3人家族が黙って見つめて、夕食のひとときが幕を閉じる。

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