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2010年7月 6日 (火)

保存という名のひかり(その11 国立歴史民俗博物館のこと4)

国立歴史民俗博物館のこと(4)

 創形美術学校修復研究所での5年が過ぎようとしていた頃の私は、どこでもいいから外へ羽ばたきたい気持ちで一杯だった。当時、我が身の能力を省みず、テートギャラリーが保存の職員を募集するという記事を読んで、応募書類を取り寄せたこともあった。自宅に届いた黄色の封筒を、どきどきしながら恐る恐る開封したのを鮮明に覚えている。Her Majesty というヘッドレターに英国の威厳を感じたりした。

 そんなある種の飢餓状態の私に、先輩から歴博への就職話を頂いた。ここまで僕を導いて下さった歌田先生に対する大恩を感じつつも、実のところ有り難かった。歌田先生のところに時折来る就職話は、みな他の人のところへ行ってしまう。すっかり気落ちして、半ばやけくそ気味の生活がしばらく続いたこともあった。

 私が所属した情報資料研究部展示科学研究部門は、何を研究するところなのか名前を聞いてもピンとこない部署だ。情報資料研究部は博物館に必要な基礎研究を行うところで、当時部長の田辺三郎助さんからは何をやってもよいと言われた。もっとも自分の得意分野は保存科学なので、そちら方面で何をやってもよいという意味であったのだろう。

 展示科学研究部門の教授は濱島正士さんという建築史の研究者で、寺院建築の専門家である。そんな具合だから、部門の中で共通したテーマを一緒に研究することは、なかなか考えられない状況であった。しかし濱島さんは建築の専門家として博物館の構造的な問題、私はその中の環境的な問題に連携して対処していた。

 こうした歴博の環境下で、私は絵画調査方法の確立、相対湿度調節と材料、光放射と劣化の関係などについて研究を進めることにした。これらの研究テーマは、創形美術学校時代の4日勤務、3日休みの間に読み進めた論文を基礎にしながら、自分が目標として掲げたものである。

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