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2010年6月29日 (火)

保存という名のひかり(その9 国立歴史民俗博物館のこと2)

国立歴史民俗博物館のこと(2)

 研究費が潤沢と言うだけではなく、施設的な面でも驚くほどの充実が図られていた。歴博のシンボルは、ション・コネリー主演の映画「薔薇の名前」に登場した写本を収蔵する塔と同じ、巨大な収蔵庫である。厚い外壁と十分な断熱層、収蔵庫の内部は良質の木材を十分に用い、24時間完全空調が行われているため、収蔵庫内の温湿度変化は全くと言っていいほどにない。文化財の保存環境としては理想的な空間である。後に私が勤める東博の現在の同僚が、ある時歴博の収蔵庫を訪れたとき、そこに置かれた毛髪温湿度計の記録用紙を見て、記録された温湿度のグラフがあまりにも直線であったため、機械が故障しているものと思ったそうである。決して壊れているのではなく、実際にそのように安定した環境なのである。彼にとって、そもそも収蔵庫の環境とはもっと変化に富んだものであるという認識しかもてないほど、現在勤めている東博の環境が酷かったのであろうと想像する。

 そのような適切な環境の中に、新設博物館であるため空間的に余裕をもって文化財が収納されていた。それでも開館10年もすると、収納スペースの狭さを危惧する声が出始めてはいたが、東博とは比較にならないほどの空間があった。歴博の組織は4つの研究部と管理部からなり、私が属していた情報資料研究部は博物館と文化財について情報工学、美術史、保存科学、博物館学などの領域が協力して博物館における文化財研究の新しい姿を追求する役割があったのだろうと思う。他の3研究部には、歴史、民俗、考古研究部の伝統的な学問領域があり、これら既存の分野と新しい情報資料研究部とが一体になって、これまでにない我が国の歴史研究を目指したのが歴博である。

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